・英語を上手に話せるようになりたい
・はやく話せるようになるには、どうすれば良いのだろう
こう感じたことがある方は、多いと思います。
今回は、、スティーヴン・クラッシェン教授について紹介します。
クラッシェン教授の仮説を理解して、学習に活かすことで、英語を学ぶスピートがグンと上がります。
わたしは英語・中国語が話せる日本人として、外資系企業・日系企業の海外営業部で、約15年働いてきました。しかし、生まれ育ちは日本なので、特別語学の才能があるわけではありません。
語学をどのように習得したか分析したところ、スティーヴン・クラッシェン教授の主張が、
とても当てはまっていました。
英語を効率的に学んでいただくため、スティーヴン・クラッシェン教授の研究について説明します。
よければ記事を読んでいただき、英語学習の習得スピードを上げていってください。
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スティーブン・クラッシェン教授とは
まずは、スティーヴン・クラッシェン教授について。
・1972年にUCLA(カリフォルニア大学ロサンゼルス校)で言語学の博士課程を修了
・現在は、南カリフォルニア大学の名誉教授
言語学習においてもっとも大切なことは、
“How do we acquire language?”=「どのようにして学ぶか」
だと述べています。
スティーブン・クラッシェン、5つの仮説について
クラッシェン教授は、第二言語習得に関する、5つの有名な仮説を打ち出しました。
- 習得学習仮説(The acquisition-learning distinction)
- 自然習得順序仮説(The natural order hypothesis)
- モニター仮説(The Monitor hypothesis)
- インプット仮説(The input hypothesis)
- 情意フィルター仮説(The Affective Filter hypothesis)
順番に見ていきましょう。
習得学習仮説(The acquisition-learning distinction)
習得学習仮説とは、
言語の「習得(Acquisition)」と「学習(Learning)」を区別するというものです。
これは、他4つの主張に対する、前提の理論となります。
クラッシェン氏は、以下のように主張しました。
- 言語の「習得」は、無意識のプロセスである
- 言語の「学習」は、意識下のプロセスである
- 言語能力の改善は「習得」にのみ依存し、「学習」に依存することはない
「習得」は、子供が母語を学ぶプロセスと類似した状態を指します。
一方「学習」は、学校教育で行われているような、文法ルールなどを意識的に学んでいくことを指します。
スポーツや楽器の練習に近いかもしれませんね。
たとえば「水泳」は泳ぎを練習して身体で覚えていく、
「ピアノ」は弾きながら覚えていく、といった具合です。
言語学者の中には、「習得」は子供だけが可能であり、大人には「学習」しかできないと主張する人もいましたが、クラッシェン氏は大人も「習得」が可能だとしました。
自然習得順序仮説(The natural order hypothesis)
自然習得順序仮説とは、以下の通りです。
- 言語の習得には、決まった順序があって
- ほとんどの学習者が、その順序に沿って言語を習得する
この仮説は、RogerBrwon 氏の第一言語習得の研究(幼児が母国語を身につけるときは、自然かつ無意識的で、みんな似たような順序をたどるというもの)が、ベースとなっています。
具体的には、学習者は以下の順序で言語を習得すると主張しました。
- 進行形(-ing)・複数形(-s)・be動詞
- 助動詞としてのbe動詞・冠詞(a, the)
- 不規則動詞の過去形(例: stand → stood)
- 規則動詞の過去形・3人称単数現在形(-s)・所有格(-‘s)
一般的に、上記の順番で学んでいくのが自然とのこと。
複数形の”s”のほうが、所有格の”s”よりも、早く習得されると主張。
しかしクラッシェン教授は、簡単に「学習」できるものが、最初に「習得」できるとは限らないと言います。
例えば、英語の三単現の「s」のルールは、学校で「学習」します。
それほど、難しくないですよね。
しかし、実際に三単現の「s」を使って話せるようになる(=習得)には、
かなりの時間を要するということです。
また、普遍性を疑問視する研究結果(反論)もあります。
例えば、以下のようなものです。
- 日本人の場合は、複数形の”s”よりも、所有格の”s”のほうが早く習得される
- その理由は、日本語には所有格の”s”に対応する「の」という助詞がある一方で、
- 複数形の”s”に対応する日本語は存在しないため
つまり、第二言語の習得順序は、母国語の影響を受けるということです。
自分の母語(first language)の特性を理解していると、
第二言語習得に役立つ。
これがポイントです。
モニター仮説(The Monitor hypothesis)
モニター仮説とは、以下の通りです。
- 意識的に「学習」した言語は、発語を「モニター」することにしか有効でない
- 「習得」された言語しか、発語の能力は持たない
「モニター」というと、ピントこないかもしれません。
その場合、「チェックする」というイメージで捉えてください。
「意識的に “学習” した内容」は、「無意識に “習得” した内容」を活用して発話する際に、
その内容が正しいかをチェック(モニター)する機能を持ちます。
「”習得” したスキル」でアウトプット作業をするとき、「”学習” して得た知識」をもとに、アウトプットする内容をチェックしますが、学習した内容はアウトプットに必要な材料ではなく、あくまで正誤確認のための判断材だということです。
クラッシェン教授は、言語の「習得」と「学習」を明確に区別したうえで、それら2つの異なるプロセスは大人において共存しうると、主張しました。
それらが第二言語の発話において、どのように機能するのかを説明したのがこのモニター仮説です。
「学習」によって身につけた言語の知識は、あくまで “Monitor or Editor” という、特定の機能しか持たないと主張しました。
これは、発話の前や最中に、自分が発する言葉が、文法や規則上正しいかどうかをチェックし、間違っていれば正しく訂正するという機能しか持たず、発話自体の能力向上にはつながらないというものです。
また、このモニターが過剰に働くと、正しい文法やルールに基づいて発話をしようと考えるあまりに流暢な発話が妨げられてしまうというマイナス効果も指摘されています。
ちなみに、モニター仮説に対する反論として、以下があります。
- 学習により得られた知識であっても、モニタリングを何度も繰り返すことで、無意識的に使いこなせるようになる
- またそれにより「自動化」が起こり、言語能力の向上に貢献できる
すこし複雑かもしれません。
ここでのポイントは
①言語は、反復により習得される(身体で覚える)
②学習よりも、習得を意識する
③学習を意識しすぎると、習得の妨げになることがある
ということを、覚えておきましょう。
インプット仮説(The input hypothesis)
インプット仮説は、クラッシェン氏が第二言語取得において、最も重要だと主張した仮説です。
言語力を効率的に高めるには、現在のレベルより、すこし高いレベルのインプットを意識することが大切というものです。
この、理解可能なインプット(Comprehensible Input)こそが、最も大事だというものです。
クラッシェン教授は、以下を意識することが大切であると主張しました。
- 現在の言語習得レベルを「i」
- 僅かに高いレベルを「i+1」
- 「i+1」のインプットこそが、もっとも自然に言語を習得できる
インプットであれば何でもよいわけではなく、以下を強調しています。
- 「理解可能なインプット」が最も重要である
- アウトプットは、あくまで言語習得の結果
- アウトプット自体は、学習者の言語能力向上には全く影響しない
しかし、第二言語習得研究の世界では、このインプット仮説が主張する「インプットの重要性」については大方合意が得られているものの、インプットだけで十分なのかどうかについては、反論があります。
具体的には、以下のようなものです。
- インプットは必要だが、十分条件ではない
- アウトプットも非常に重要である
- 言語習得には、言葉のやりとり(インタラクション)が重要である
Merrill Swain氏は、アウトプットの重要性を、「アウトプット仮説」で唱えています。
これは、インプットだけでは不十分で、アウトプットがないと学びが深まらないというものです。
また、Michael Long氏の「インタラクション仮説」も有名です。
これは、インタラクト(交流)することで相手の意図が理解できて、「理解可能なインプット」が可能になると主張したものです。
情意フィルター仮説(The Affective Filter hypothesis)
情意フィルター仮説とは、感情的な要因がいかに第二言語習得に影響を及ぼすかを説明した仮説です。
「不安」や「自信のなさ」といったネガティブな感情が、言語の習得能力を低下させてしまうというものです。
心理学者であるクリスロンズデール氏の主張でも、
良い精神状態を保つことは非常に大切であると説明されています。
クラッシェン教授は、第二言語習得の成功に関わる感情として、
以下の3つを挙げています。
- 「Motivation(動機付け)」
- 「Self-confidence(自信)」
- 「Anxiety(不安)」
動機が強ければ強いほど、自信があればあるほど情意フィルターは低くなり、
言語習得に成功しやすくなると言っています。
一方、不安な気持ちが強いと、情意フィルターは高くなり、スムーズな言語習得の妨げとなると言っています。
MAO
モチベーションが高く自身に満ちた方は、言語習得が早いということですね。
言語を話す「自信のなさ」や、間違えたら馬鹿にされるのではないかといった「不安」が、
言語習得に悪影響を与えてしまうということです。
スティーブン・クラッシェン、5つの仮説についての反論
クラッシェン教授の5つの仮説に対しては、他の言語学者からの反論もあります。
代表的な批判は、以下の通りです。
- 「習得」と「学習」が、明確に分けられるものであるという、論理的な根拠がない
(「習得学習仮説」に対する批判) - 「i+1」の「+1」が、具体的にどのレベルまでを指すのかが曖昧で、具体性に欠ける
(「インプット仮説」に対する批判) - 第二言語習得における、アウトプットや文法教育の有用性を否定している
(「インプット仮説」に対する批判)
これらの批判には、妥当なものも多くあります。
現在の第二言語習得研究において、クラッシェン氏の仮説を全て正しいと考えるのも、納得できますね。
まとめ
クラッシェン教授が70年~80年代にかけて提唱した5つの仮説を一つ一つ見てみると、
仮説に対する批判が多くあります。
一方で、英語学習者の実感としては、納得できる部分も数多くあることが分かります。
「インプット仮説」が提唱するように、全く基礎的なインプットがないまま、オンライン英会話などでアウトプットを続けていても効率が悪いという実感を持っている方は多くいます。
また、「モニター仮説」が提唱するように、「学習」によって学んだ正確な英文法や規則などは、
頭では理解できます。
日本の学校教育で学習するので、ほとんどの日本人が知っていることですね。
・しかし、それで「習得」しているわけではなくて
・スピーキング時に、三単現の”s”を完全に無意識で正確に使いこなすのはとても難しい
ということは、誰もが共感できるはずです。
このように、第二言語習得に関する理論には、実際の英語学習者の視点から見たときに、腹落ちするものが数多くあります。
特に「モニターモデル」は、その後の第二言語習得研の世界に大きな影響を与えており、
英語を学んでいる方であれば、一通り学習しておいて損はありません。
これらの仮説を一つ一つ理解していくことで、効率的に英語を学ぶための方法や道筋は自然と見えてきます。
上記で紹介した内容を参考としていただき、効率的な英語学習に活かしていただければ幸いです。
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